どのまちも誰かの大切なふるさと。地域の魅力と生産者の想いを伝えたい。

宇山淳子さん

三鷹で子育てをしながら都心にある福山市東京事務所に勤務し、都市宣伝業務に携わっていた宇山淳子さん。2015年に株式会社ヒトコトヤを起業し、各地の生産者と三鷹をつなぐ活動や、市内の農産物に着目したハーバリウムのワークショップも開催しています。やさしくふんわりした笑顔での多彩な活躍ぶり。そのバイタリティの源泉について、お話を伺いました。

宇山淳子さん(いて座)
広島県福山市出身。福山市役所に勤務ののち、結婚退職し上京。2003年から福山市東京事務所常勤職員。2014年3月に退職し、2015年7月に(株)ヒトコトヤを設立。現在、(一社)みらいデザインラボ代表理事として、地域交流活動にも携わる。

地元・三鷹産の素材を使ってハーバリウムを作る

-最近は、三鷹をイメージしたハーバリウムを手がけられているそうですね。

三鷹特産のキウイフルーツを自家製ドライフルーツにしたものや、三鷹の花卉農家さんが栽培したスターチスのドライフラワーを素材として、オリジナルのハーバリウムを作るワークショップを開催しています。

私は前職での経験や人のつながりを生かして、日本各地の物産などを三鷹のみなさんにお届けしてきました。それによって地域の魅力を知っていただき、各地域と三鷹が繋がるような取り組みを重ねていきたいと、ヒトコトヤを続けてきたのです。その中で、地方だけではなく、三鷹という地域の魅力をお伝えするのもとても大事だと思うようになりました。ドライな素材を特殊なミネラルオイルで瓶に封じ込め、独特の世界を作って長く楽しめるハーバリウムは、それにぴったりだと考えたのです。

ハーバリウムは手頃な大きさで持ち運びがしやすく、ギフトにも向いています。遠く離れたご家族や他の地域で暮らすお友達に贈るのにも、ご自分の思い出にとっておくのにも良いアイテムだと思います。

-ハーバリウムに着目したきっかけはどういうことだったのでしょう。

もともと花材の扱いに興味があったんです。1年ほど前に雑誌かWebの記事で見て「きれいだな」と思い、「地域特産品でこれを形にすれば、その街を瓶に入れてコレクションできる!」という発想が湧いたのです。

「ワークショップをするには講師の資格を取らなきゃ」と、資格を取りました。12月に池袋のマルシェから声をかけていただいて、出店をした時に、皆さんからお預かりしている特産品・食品に加え、オリジナルのハーバリウムも出してみました。とても好評で、コンセプトに共感してくださる方もいらっしゃいました。

三鷹で作られたスターチスを素材にしたハーバリウム。

三鷹で作られたスターチスを素材にしたハーバリウム。

-単に作って販売するのではなく、ワークショップという形態にしたのはなぜですか。

私自身もそうですが、素材を手にとって楽しみながら作る過程で、そこに関わられたいろいろな方の想いを受け止め、対話するきっかけになります。しかも、出来上がったハーバリウムはオンリーワンです。同じ方が作ったとしても、決して同じものにはならない面白さがあります。

ハーバリウムは無理なく手の届く範囲で試みることができ、地域特産品を商品化する新しい可能性を示すアイテムではないでしょうか。今後も、この取り組みを長くつなげていきたいと考えています。

「母の日」をテーマにした初心者向けハーバリウムワークショップ(withbaby bAceにて)。

「母の日」をテーマにした初心者向けハーバリウムワークショップ(withbaby bAceにて)。

地域物産を通じて伝えたいこと

-宇山さんの場合は地域物産の販売にも、常に何かプラスアルファの想いが加味されているような感じがします。

ヒトコトヤを始めて丸3年になりますが、自分が販売だけに特化できない体質なのがだんだんわかってきました(笑)。「お金で還元できない幸せ」につなげる方が長く続けられるようです。両親も商売をしていて自営の大変さを見ながら育ったので、「商売をする上では、そんなの甘いよ」と言われることもわかります。でも私は、その甘いところにある幸せのつなぎ方を探しているんですね。

物産をお届けする際に、生産者はどういう想いで作ったのかていねいにお伝えしたい。それも特別に高価な贅沢品ではなく、普段の生活の中に取り入れて、ほっこりと幸せな気持ちになれる。そのようなものをまず手にとっていただくようにするのが私の役割だと考えていて、それがイベント作りにもつながっています。

-三鷹コラルでの物産展も企画・実施されていますね。

2017年3月に広島物産展を、6月に青森の物産展を開催しました。デッキからつながる2階部分の空間の活用について悩んでいらした三鷹コラルの企画担当の方から「地方物産で何か企画はできないでしょうか」とお声がけいただいたのがきっかけです。コラルは昔商店街だったところがビルの形になったのだそうで、「商店街として盛り上げたい」とおっしゃっていました。

最初は前職のつながりがある広島県管轄のアンテナショップにお話しし、広島物産展を開催しました。「この場所で物産展をやったらどんな感じなのか」という実験も兼ねた初挑戦でしたが、たくさんの人が来てくださって売上も立ち、好評価をいただけて次につながりました。

三鷹コラルの広島物産展(2018年6月)にて。広島県が力を入れているレモンも登場。

三鷹コラルの広島物産展(2018年6月)にて。広島県が力を入れているレモンも登場。

-青森物産展には太宰治関連資料のパネル展示もありました。

何年か前から三鷹コラルさんにて6月の桜桃忌に合わせたパネル展示をされています。昨年この展示の企画に携わった際に、私の方からは「太宰治と井伏鱒二展」を提案しました。太宰の師匠である井伏鱒二は福山出身です。双方のまちとのゆかりが生まれればとの思いもあって、福山市にあるふくやま文学館に井伏鱒二関連の資料をお願いできるよう取り次ぎをし、パネルを制作いただくことができました。

また2018年6月には、再び広島物産展を開催しました。今回広島を舞台にした映画「この世界の片隅に」のパネル資料展も開催したのですが、実は三鷹はこの映画を市民の皆さんの手で3回も自主上映しているんです。その経緯もパネルにしようと映画上映に関わって下さった方々をつなげ、さらにこの企画がパワーアップしました。
完成したパネル展示は大変好評で、市内外からお客様が展示を観るために三鷹コラルを訪れて下さっていると聞いています。

次の青森物産展では、三鷹在住の映像作家・今尾さん監督作品で、昨年の三鷹連雀映画祭でも上映された「太宰橋」というショートムービーの上映会を企画しています。物産だけではなく、三鷹とのつながりを楽しんでいただける要素を盛り込めたかと思います。

-人と人とをつなげる力がすごいです。

家が自営で長女だったので、小さい頃から大人に囲まれ、感情の機微を読み取る感覚が育ったのかもしれませんね(笑)。基本的に人が好きなので、苦にせずやれています。

前職を退職してヒトコトヤを立ち上げるまでの間の一年間は、立候補して地元町会の子供会長と、小学校の学習ボランティアをしていました。地方とは比べ物にならない速度で街が変わっていく中で、東京には東京を故郷とする方々による暮らしを守る尊い活動があります。お祭りを運営したり防犯活動をしたり、地域の高齢者の方に声かけをしているのを見て、人のつながりはどこでも同じだと実感しました。

関われば関わるほど、お互いの持つたくさんの引き出しを開け合い、豊かな関係を作れます。ということは、三鷹でも自分の信じていることをコツコツ重ねていけばいいのだと思ったのです。

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ひろしまブランドショップの担当者と。左手には映画「この世界の片隅に」のパネルが展示されている(三鷹コラル2F)。

人とつながる中で自分の強みを発揮する

-活動されていく上で、一番に心がけていらっしゃることは?

自分が出来る役割を、いま形にすることです。来年になると人のつながりも変化するかもしれませんし、自分の想いもどう変わるかわからない。

実は昨年6月、三鷹コラルの展示が終わった直後に実家の父が倒れ、私にとってはそれが大きな転機になりました。もしかしたら私は、父がいつまでもいてくれる、何かあったらいつでも叱ってくれると甘えていたんじゃないかと、しみじみ思いました。実家にサポートに帰りながら、自分の時間とエネルギーは有限であることを意識したのです。

私にとって家族の存在はとても大きいものです。大切な家族ときちんと関わりながら、本当にやりたい方向に向かっていくためにはどうしたらいいのかと考えるようになりました。

—それによって、何が一番変わられたのでしょう。

地方の農家さんを直接お尋ねしてお預かりした商品を皆さんにご紹介する機会や、小売販売業としての活動はこれから減っていくと思います。三鷹中央通り商店街M-マルシェにもずっと出店してきましたが、これからは商品を売るより、例えばハーバリウムのワークショップとして出店するとか、地方の方からご提供いただいた素材のPR場所をご紹介するなど、本当の意味のつなぎ役をやっていきたいなという思いが強くなっています。

M−マルシェ出店中の宇山さん。知り合いが次々に足を止めては話し込んでいく。

M−マルシェ出店中の宇山さん。知り合いが次々に足を止めては話し込んでいく。

-これからはどのような活動をされていきますか。

「まちなか農家プロジェクト」のサポートメンバーにもなっていて、料理のレシピを提供したり、農家さんへのインタビューにお付き合いをさせていただいたりしています。地域の暮らしの中で作られているものと作り手の想いを、皆さんに噛み砕いてお伝えすることができたらいいなと思っています。

昨年は米国バーモンド州ミドルベリー大学からICUに来ていた留学生女子2人を、3ヶ月間インターンとして受け入れました。平飼いの卵とキウイフルーツを作っている三鷹の農家さんにも案内し、彼女たちはアメリカでは考えられない都市農業の現実を興味深く見て、とても喜んでくれました。私も他国の文化の中で育った若い学生さんと触れ合い、身近な素材を身近な人たちと共有することの大切さを改めて感じました。そして三鷹に暮らす農家以外の方々にも、このような農の風景をもっと知っていただきたいと思ったのです。その農家さんのキウイフルーツをハーバリウムに使ってみて好評だったことが、今のハーバリウムのワークショップにつながっています。

-これまでの3年間でやってきたことをベースに、新たな展開が生まれているのですね。

いろいろやってみた中で、自分の向き不向きがだいぶわかってきました。得意でないことに取り組んだことも、自分はどういう人間で得意なことは何か、得意なことをどう活かせばいいのか、考える良いきっかけになりました。ライフ・ワークバランスといわれますが、大切な家族との生活の中でバランスをとりながら、自分のかけがえのない居場所としての仕事を創り上げていく。さまざまな役割を総合して、私という存在が出来上がっているのだと思います。

自分の強みを1個ずつ洗い出していって、その強みを最も効果的に活かせる相手とつながって、目指すことを形にしていくのが良いのではないかと考え、今いろいろな方と交流させていただいています。

どうしても体力や時間の限界はあるので、そこは知恵と工夫と経験値で勝負します(笑)。そして今の私に必要なことは何かを常に考えながら、目の前の課題を乗り越えていくことが大事なのではないかと思います。


この記事を書いた人
萩谷 美也子 (いて座)サイエンスライター

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