小さくてもいい、感動のあるお店でありたい。心に居場所をつくる街の家庭料理店

リトルスターレストラン ミヤザキアサミさん・okayanさん

肩肘張らない暖かい雰囲気に、定番のご飯。三鷹中央通りの「リトルスターレストラン」は、三鷹の食いしん坊が足繁く通う店として知られています。オーナーのミヤザキアサミさん・okayanさん夫妻の毎日は、お店一色。掛け合い漫才のような会話の随所から、お店にかける思いがほとばしっています。

ミヤザキアサミさん(乙女座)
リトルスターレストランのオーナー、店長・料理人・プランニング担当。20代は食品関係の広告・販促プランナー、コピーライターとしてがむしゃらに働く日々だった。2004年にokayanさん、母親、友人と4人でリトルスターレストランを開店。

okayanさん(牡牛座)
リトルスターレストランのオーナー、デザイン・経理・ホール担当(おしゃべり店員)。大学卒業後就職せず、1年半の25ヶ国のバックパッカー旅へ。戻ってから、フリーター、グラフィックデザイナーを経て、リトルスターレストランを開店。

三鷹の小さなワンダーランド

-お二人はいつも楽しそうですね。

ミヤザキ
私は本当にすごく仕事が楽しくて、「今日は仕事行きたくねー!」と思ったことは一度もありません。毎日、「よっしゃ、今日も行ったるで!」って。嫌なことがあるとしたら、お客さんがあまり来ない日があることです(笑)。
okayan
俺も(笑)。
ミヤザキ
お客さんが来ないと、せっかく仕込みを手間暇かけて一生懸命やって、「こんなにおいしいものが出せるように準備しているのに」って、悲しくなっちゃうもんね。
okayan 
でも楽しそうに見えるんだったら、よかったです。楽しそうにしているのも、仕事のうちだと思ってます。スタッフによく言うんですけれど、「ここは飲食店じゃないよ、ワンダーランドだから」って。お客さんに「今日ここに来てよかったな」と思っていただきたいんです。

-ワンダーランドですか。どういう意味でしょう。

okayan

ディズニーランドで、ミッキーマウスがつまらなそうにしていたら、嫌ですよね?

うちの場合、もちろんご飯がおいしいことが一番の価値で、食事にお金をいただいているのだけれど、その周りにあるサービスがしっかりしていて、店員さんも楽しそうに働いている方がいい。そこまでできて、ディズニーランドみたいに感動のあるお店、来てよかったなと思ってもらえるお店、という意味での「リトスタ・ワンダーランド」が成り立つと思っています。

ミヤザキ
たとえば、そんなに儲かってないのに、ランチにはスタッフがたくさんいるんですよ。あまりに暇なときには「一人減らそうか」とか考えるんですけれど、混むときもあるし、「いや、無理かなー」って。
okayan
一人少ないことによってお客さまの満足度がガクーンと下がるんですよ。それが嫌なんです。
毎日仕事に全力投球のミヤザキアサミさん

毎日仕事に全力投球のミヤザキアサミさん

-ワンダーランドについてもっと詳しく聞かせてください。まずはお料理から。

ミヤザキ

奇をてらわない、というのが私の料理のルールです。食べてほっとする味であることです。牛肉とトマトのスパイス煮込みというメニューがあるんですけれど、レモンの酸味が効いた肉じゃがのような味なんですが、じつはアゼルバイジャンの家庭料理なんです。どこかでは定番で食べられているものは、安心感があるし、とんがりすぎてない。リトスタは日本と世界の家庭料理の店なんだと思ってやっています。

それと、ランチ850円というのが命題なんです。私もこのぐらいで食べたいし、850円なら週一で来てもらえるかなと。850円でできるだけ最良のものを出そうと考えています。1100円とか、1300円とか、もうちょっといい値段のものもあります。あまりに850円に縛られすぎると、逆においしいものも出せなくなってしまうので。でも基本は、定番の850円のランチです。

味噌にしても、もっとこだわりの味噌が使えればいいんですけれど、850円でお出しするランチの原価には限界がある。でも出汁をちゃんととって、出汁の旨みが感じられるバランスで味噌を使えば、いい味噌汁ができます。

-おしゃれすぎたり、食通向けだったりしない、家庭料理らしさの秘密はそこだったのですね。

ミヤザキ
家で真似して作りたいと言われることも多いので、レシピも聞かれたらだいたい教えていますね。口頭でですけど。
okayan
そんな企業秘密とかないので(笑)。
ミヤザキ
真似されておいしいものが広がるなら、いいことだなって思うんです。でも、「おいしさ」って料理する人の腕次第で大きく左右されます。いい食材もレシピも大切だけど、腕が悪ければ台無しですよね。うちのお店で出している卵焼きとかおにぎりとか、誰だって作れるものだけれど、リトスタのはおいしいよねと思わせるのが腕だし、そこで勝負しています。
ボリュームと懐かしさが同居する、ランチのハンバーグ定食

ボリュームと懐かしさが同居する、ランチのハンバーグ定食

-ワンダーランドのもう一翼、サービスについて聞かせてください。リトスタはよくお客さんに話しかける店ですね。

okayan
コミュニケーションは大事です。お客さんに話しかけて、その反応はお客さんによって全然違います。それでサービスに求めてらっしゃるものがわかることもあります。常連さんが多いですし、客席でおしゃべりもしますけれど、それなら初めて来られた方ともおしゃべりをしなくては、と思ってます。お客さん全員にしてあげられないサービスはしてはいけないと。そこは筋を通してます!
ミヤザキ

まあ、しゃべってないで、早く帰ってきて!というときもあるけど(笑)。

修業時代も経験もほとんどなくお店を始めて、飲食店はこうあるべきだ、というセオリーを全然知らなかったので、いまでもお客さん目線なんです。接客マニュアルがない。このお店で経験したことがすべてです。

okayan
だからスタッフがちょっとミスをして、お客さんが「大丈夫よ」と言ってくださっても、「ちゃんと報告して」と言ってます。「お客さんに僕らが謝るチャンスをちょうだい」って。僕らは、食事を終えて店を出てからのお客さんの気持ちも預かってると思ってるんです。ランチで嫌な思いをされて帰ったら、午後の間ずっと嫌な思いをされるわけじゃないですか。
ミヤザキ
リトスタに来てよかった、とお客さんに思っていただくために仕事をしているので、ちょっとしたことでそれを損なうこともあるということを忘れてはいけないと思っています。
okayan
うちはタッチ数(お客さんとの接客回数)が多いんです。荷物入れを持って行って、おしぼりを出して、おしぼりの袋を回収して…と。

-すごくよくお客さんを見ているということですよね。

1

ミヤザキ
初めからタッチ数の多い店にしようと考えていたわけではないんです。やってるうちにこうなりました。okayanがスタッフに一番よく言うセリフは「お客さんに聞いてください」なんです。「答えはお客さんの中にある」。
okayan
たとえば、あのお客さんは毎回コーヒーにミルクをつけるけれど、今日の気分は違うかもしれない。勝手に忖度してミルクをつけて出したら、そのお客さんの気分をないがしろにしていることになる。だから「常連さんにも毎回、聞いて」とスタッフに言っています。「どう聞いたら素敵なのか、言い方も考えて」って。スタッフがいてこそのリトスタ・ワンダーランドです。スタッフにもいろんな個性があって、面白いなと思いますね。

-スタッフにはどういう方がいらっしゃるのですか。

ミヤザキ
いまスタッフは私たちを含めて13人。大学生が3人、その上が34歳。幼稚園の先生が週末に助っ人で入っていたり、元常連さんもいます。
okayan

前は20代の子がハツラツと働くような店だったんですけれど、世相を反映しているんでしょうね。いまは子育てがひと段落した40代が手を貸してくれています。

これ(取材時に店内に貼られていた、スタッフを一人ずつ写した写真ポスター)は、14周年記念に作った手ぬぐいを宣伝するためのポスターなんですけれど、ある意味、スタッフ自慢です。こんなに素敵な人たちがいるんですって。

ミヤザキ
最近、ティータイム営業をやらなくなって、みんなでまかないを食べるようになりました。みんなのコミュニケーションが密になって、いい感じです。「みんなそんなことを考えてたのか」と思うことがよくあります。
14周年記念手ぬぐいの宣伝ポスターは、スタッフ一人ずつのポートレイト

14周年記念手ぬぐいの宣伝ポスターは、スタッフ一人ずつのポートレイト

毎日来られるお店を作りたい

-14周年とのことですが、その前はお二人はどんなことをしていたのですか。

ミヤザキ
私はプランナーやコピーライターをしていました。食品系の広告やマーケティングをしていて、すごく楽しかったし、10年間やっていたので自分はプロだという自信はできてきたんですけれど、マーケットの状況を分析して提案するだけでなく、そこにクライアントや自分の会社の都合をのっけて落としどころを考えて企画を作らなくてはならない、宴会の幹事さんのような忖度作業に疲れてしまったんです。もっとシンプルに自分がいいと思うことをやりたい。「30歳になったら好きなことをしよう、そのために頑張るぞ」という20代でした。
okayan
僕はミヤザキさんがディレクションしたものを作るデザイナーでした。
ミヤザキ
30が近づいてきたときに、母の料理を出す店をやろうという話になって。「一生この仕事をするんだ」というような、決意と希望に満ち満ちたものではなくて、「なんか、面白そうだなー」という、最初は思いつきでした。でも「一生飽きずに続けられそうだな、面白そうだな」と思って。自分のなかで一番大切にしているのが、「面白そうかどうか」なんです。
okayan
って言うと、なんだか頭が悪そうに聞こえるね(笑)。
ミヤザキ
毎日毎日、ご飯のことを考えていればいいんでしょ、それって超楽しいじゃん。
okayan
毎日毎日、ビールも飲めるんでしょ、と思ってましたよね。
ホールを担当するokayanさんは大のおしゃべり好き

ホールを担当するokayanさんは大のおしゃべり好き

-気負いなく始めたのですね。この場所にお店を開いた決め手は?

ミヤザキ

三鷹で始めたのは、一見さんばかりが来るお店にしたくなかったから。毎日来ても飽きないお店にしたくて、吉祥寺や武蔵境も見たんですけれど、ちょうどいい家賃で、ちょうどいい隠れ家感があるのはここしかなかった。

で、ここでお店を始めたんですけれど、最初の1年はたいしてお客さんが来ないし、儲からないし、体力的には大変だし。でも、「まだお客さんがうちを見つけてないだけだ」と思ってたんです。

okayan
「3階はなかなか見えないよね」とかね。
ミヤザキ

でも気に入った人がもう一度来てくれるようになって、それが自信につながって。何より母の料理は絶対においしいと自信がありました。

初めは私は料理を助手としてやってただけで、母が引退するときに「あんたがやればいいじゃない」って言われたんですけど、「できるかなー」って。

okayan
まだ開店して1年経ってなかったからね。
ミヤザキ
母は「10年やったら、料理研究家になれるわよ」って。「ならやってみるか」と腹をくくりました。初めのうちは揺らぐ部分もあったけれど、3年ぐらいやると失敗が少なくなって、いまは意識した通りのものが作れる。塩加減も、素材を揉む加減も、火加減も。やっぱり10年ぐらいやらないと仕事のプロにはなれないですね。

14年を経て気づいたあれこれ

-では、リトスタは飲食店のプロになったということですね。

okayan

はははは。でも14年やってても、暇なときは本当に暇で、忙しいときは本当にドカーンと来るんです。読めないんです。わかってたらスタッフのシフトの組みようもあるのに。「今日もお客さんが来てくれてよかったね」って言ってますもんね(笑)。

あと、何がヒットするのかもわからないですね。春に1ヶ月ぐらい、たけのこチャーハンを出すんですけれど、その時期は黙っててもお客さんが来る。

ミヤザキ
毎週来る常連さんは、先週と違うメニューが出ていたらそれを頼むんですよ、だいたい。でもたけのこチャーハンだけは毎週食べるんです。
okayan
そんなメニューはこれだけなんです。
ミヤザキ
なんで人気になったのかもわからないんだよね。
okayan
うん、全っ然わからない。
ミヤザキ

大家さん(1階で野菜や乾物などを販売しているヒロヤショップ)からたけのこがおいしいって聞いて、下のほうの硬いところは若竹煮に向かないから、きんぴらにしたり、いろいろやっているうちにチャーハンが生まれて。

食べたことのある人は本当にすごいよね。3月初めぐらいから「あれはいつから出るか」って。煽られて怖いぐらい(笑)。

リトスタで一番の人気メニュー、春限定のたけのこチャーハン

リトスタで一番の人気メニュー、春限定のたけのこチャーハン

-ヒットの法則はわからないものなんですね。

ミヤザキ
ずっとブランディングとか商品開発とかやってきましたけれど、どうして売れたのかという理由は、全部後付けだなって思うんです。積み上げ式で出てきた答えは絶対に面白くなくて、いきなり宇宙からアイディアが降ってこないと、本当に素晴らしいヒット商品ってできないと思うんです。
okayan
ベースになるアイディアや思考は常日頃からあるんですけれどね。いやぁ、たけのこチャーハンに続く人気メニューを作りたいですよ!

-開店前から一緒に仕事をしていて、開店してからご結婚されています。毎日、長時間、一緒にいらっしゃるのですね。

okayan
ほとんど24時間一緒にいます。お店にはお昼11時前ぐらいに来て、深夜1時ごろまでいますね。
ミヤザキ
通勤はだいたい30分ぐらい。三鷹の深大寺の家から歩いて通ってます。30代後半に入ったころ、「このままでは一生仕事はできない、自分で鍛えていくしかない」って思い始めて。「毎日歩いて体力をつけよう」ってokayanが言い出したんです。
okayan
だんだん歩けるようになって、いまでは休みの日はお店に寄ってから吉祥寺に歩いて出かけたり。帰りも寄り道して飲んでから、家まで歩いて帰ったり。

-お二人とも元気でおしゃべりですけれど、似た者夫婦ですか。

ミヤザキ
この人はすごく時間をかけて考えるんですよ。私はひらめくほう。お店を始める前は、二人とも小器用にいろいろやる、似たタイプだなと思ってました。器用貧乏タイプ(笑)。でもまさか、ここまでokayanが根暗だなんて。
okayan
俺は知ってたよ(笑)。
ミヤザキ
私は楽観的なので、性質が真逆だと気づかされました。
okayan
リトスタはどうあるべきか、どういう風にこの局面をやっていくか、と常に二人で考えてるんです。
ミヤザキ
24時間ずっと一緒に14年間考えてますから、二人の逆に違いが鮮明になってきましたね。

とにかく、面白く生きたい!

今後、こういう店にしていきたいという夢はありますか。

ミヤザキ
さっきも言いましたけれど、なるべく面白おかしく生きたいわけですよ。そのためにいま、お店をやっている。やりたいことを追求して食っていけないんならヤバいですけれど、いまのところお給料が滞ったことはなく、お店が回っているので、しばらくは頑張っていこうかな。まだ自分の目指してきたとおりのお店になったとは言えないので。
okayan

続けてきてわかったのは、想定外だったのですけれど、お店でご近所づきあいのようなものができてくるんです。「全然、来なかったけど、どうしたのよ」「介護で帰っててね」なんて話をするんです。お客さんのそんな事情を聞いて何かできるわけではないけれど、お客さんの話を共有できるようになりました。

お客さんがお店のことを心のどこかに置いてくださるということは、つまり僕らの居場所がそこにあるわけで、そのお客さんを思うとき、僕らのなかにそのお客さんの居場所があるんですよね。

ミヤザキ
だからお客さんが少ないときは、ちょっと、こう、お客さんに、
okayan・
ミヤザキ
愛されてないって……。
ミヤザキ
恋人に放っておかれている彼女のような気持ちになってしまうんです。「私のこと、本当に愛してるの?」みたいに(笑)。
時折つっこみ合いながら、お店について語り合う二人

時折つっこみ合いながら、お店について語り合う二人

okayan
でも長く続けていけば、親に連れられてきていた小さな子が成人して、お酒を飲むようになって、うちのお客さんになって、その子どもを連れてきて、なんて。
ミヤザキ
うちでもそういうことが起こり得るんだよね。
okayan
それが楽しみなんです。開店前に想像していたより、はるかに面白い仕事でした。
ミヤザキ
いまのお店で十分楽しいんです。大きいビジョンは特にないんです。お店を大きくしようとか、店舗を増やそうとかすると、ひとつひとつに手をかけてあげられる濃度が薄まる気がして。それよりいまの店の精度を上げていきたい。リトルスターレストランという小さな星を、小さくてもいいから、もっと輝く星にしたい。みんながふらっと来ておいしいものが食べられる店として、なるべく長く三鷹でお店ができればというだけで。
okayan
一緒に働いてくれるスタッフがいて、食べに来てくれるお客さんがいて、この二つのラッキーがあって成り立つお店なんです。頑張ってきたから、ご褒美のようなこのラッキーで14年間やれたんだと思います。

リトルスターレストラン http://www.little-star.ws
三鷹市下連雀3-33-6三京ユニオンビル3F 0422-45-3331
ランチ12:00~14:30 ディナー18:00~23:00

この記事を書いた人
小田原 澪 (てんびん座)ライター

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