居心地良く整えた仕事場兼店舗を友人とシェア こつこつ集めた大好きな古道具と雑貨を商う。

カツヤマ ケイコさん

さくら通りにある小さな古道具&雑貨のお店「BROCCA」を経営しているのは、やわらかな京都弁がチャーミングなイラストレーターのカツヤマケイコさん。スペースの一部をお友達のWebデザイナーとシェアし、パソコンに向かいながらお店番をしています。お店のオーナーという2足のわらじを履くに至った経緯や古道具の話、イラストのお仕事のあれこれについてお話を伺いました。

カツヤマ ケイコさん(おうし座)
京都生まれ。デザイン系専門学校を卒業後、阪急百貨店の広告制作部に勤める。フリーのイラストレーターとなり結婚を機に東京へ。2017年4月に古道具と雑貨の店「BROCCA」を開店し、イラストを描きながら営業中。3児の母。

趣味が高じて増えすぎた大好きな古道具で、将来を見据えた小さな商いを始めた

-メインのお仕事はイラストレーターなのですね。

そうです。イラストレーターになって15、6年くらいですね。こんなに長く続くとは思っていませんでした。絵を描くのは子どもの時から好きで、画家になりたかったくらいです。ただ、絵で食べていけるとは思っていなかったので、「デザインを勉強した方が仕事につながるかな」とデザイン系の専門学校に行きました。でも、デザインの仕事は絵を描くのとはまた違うセンスが必要で、けっこうしんどかったですね。

-京都のお生まれということですが、三鷹にはいつ頃いらしたのですか?

イラストレーターになった時はまだ京都の実家住まいでした。途中で一人暮らしを始め、2年くらいしてから結婚してこちら(都内)に引っ越しました。夫の通勤の関係で、最初は杉並区の賃貸に住み、それから分譲マンションを買って三鷹に越しました。

以前住んでいた西荻のあたりは、住宅地の中に個性的な小さいお店が点在するエリアになっています。最初は「そこでお店をできたらいいな」と思っていたのです。でも、適当な物件がなかなか見つからなかったのと、一番下の子がまだ保育園児とちっちゃいので、何かあった時にすぐ帰れる距離の方がいいだろうと三鷹で探しました。子どもは上から男の子、女の子、女の子で、小学校5年生、2年生、年中(2019年3月現在)です。ですから保育園はまだ一年あるんですよ。

店内には長年かけてコレクションした古道具がセンス良く展示されている。

店内には長年かけてコレクションした古道具がセンス良く展示されている。

-それはご自宅に近い方がいいですね。そもそもどうして古道具屋さんを始めようと考えられたのでしょうか。

実家が京都だったので、子どもの頃から古い民家が大好きで、古道具も好きでした。私はお買い物自体がとても好きなので、骨董市に行ってはちょこちょこ買って集めていました。そうしたら、部屋に古道具がすごい量溜まってきてしまい、「これでお店しようかな」と思ったわけです。実際やってみたら、多いように見えてもお店をするにはちょっと少なかったですけどね。

私は古道具で自分の好みの空間を作りたいのに、うちはよくあるタイプの分譲マンションなので、骨董を置いても様にならないんですよ。

-確かに。せっかくのコレクションですから、それが似合う空間に飾りたいですよね。

マンションの自分の仕事場だけは、なんとかそのような場所にしていたのですが、しまいには荷物が多すぎて、床にいっぱい積んでいるような状態で「つい買っちゃうんだけど、置いておく場所がない!」感じになってきました。「好きな物が溜まりすぎた」というのが、お店をすることにした理由の一つです。

上の子たちが小学校に入って子供部屋が要るようになったことも重なって、私が仕事場をマンションの外に出そうと思いました。どうせなら、古道具のお店も一緒にやろうという感じでしたね。

もともとは豆腐屋さんだった店舗なので、間口は狭く奥に長細い。

もともとは豆腐屋さんだった店舗なので、間口は狭く奥に長細い。

-子供部屋が要るので外に仕事場を借りるのであれば、ついでにお店にして溜まり過ぎたコレクションを売ろうと(笑)。それはなかなか斬新なアイディアです。

十何年も仕事を自宅で行ってきて、その環境に飽きたというのもあります。 自宅にいれば仕事の合間にちょっと家事も出来るし、荷物の受け取りもできるし、いいところもあるんですけれども、けじめがつかないというか、切り替えがなかなか難しいです。
「雨の日とか、わざわざ外の仕事場まで行くのが面倒くさいのではないだろうか」と思ってためらっていたのですが、実際にやってみたらそうでもありませんでした。今は自宅の外に仕事場を持って良かったと思っています。

もう一つの理由は、いわゆる「イラストレーター40歳の壁」を意識したことです。

-それはなんですか?

40歳を超えるとイラストレーターの仕事は減ると言われているんですよ。仕事自体はずっとしていたいので、そのためには仕事の内容をちょっとずつ変えていかないといけないと思っていました。先々夫の定年後に二人だけで家にいるのもしんどそうなので、自分の居場所を確保するためにも何かやり続けていたいという思いもあります。イラストの仕事をいただけるうちはもちろんがんばりますが、体力のあるうちに次の仕事を始めておいて、もしイラストの仕事が減って行ったらなんとなくシフトしていければと考えたわけです。

同業者の友達も皆考えるところは一緒のようで、子どもさん相手の絵画教室を始めたりしています。そういう友達のアトリエの壁塗りをお手伝いに行ったときに、「イラストとは別のことを始めるとか、仕事場を外に持つのってすごくいいな〜」と思いました。それがずっと胸にあったんです。

-なるほど。仕事場兼お店を持とうと考えてから、この物件に決めるまではどのくらいかかりましたか。

それから半年くらいして、物件を探し始めました。その時もここに決めかけたんですけれど、ちょうどイラストで大きい仕事が入り、開店準備ができそうになくてその時は止めました。それから半年後に改めて物件を探したときに、まだここが空いていたんです。この物件が気に入ったあまり「ここありき」で始めてしまった感じです。

鳥のモチーフが好きだという。店内のタイルは豆腐屋さんだった頃の名残。

鳥のモチーフが好きだという。店内のタイルは豆腐屋さんだった頃の名残。

蚤の市をめぐるイラストエッセイを連載。趣味と仕事と商いがひとつながりに

-表側が店舗で、後ろに居住スペースがあって、間口は狭いけれど奥行きがありますね。私は実家が商売だったので、こういう作りの昭和な建物は懐かしいです。骨董も似合うし、味わいのある場所ですよね。ここはその前も店舗だったのですか?

前は新聞販売店が倉庫に使っていました。カーテンを閉めて奥を倉庫にされていたみたいですね。その前は整体屋さんとか古道具屋さんだった時もあるらしいです。大家さんがお豆腐屋さんで、最初はお豆腐屋さんだったお店なのですけれど、今はもうやってらっしゃらないです。一部タイルが貼られているのはお豆腐屋さんだったときの名残です。

今は奥のスペースを友達の Web デザイナーが仕事に使っています。私がいない時には彼女が店番をしてくれます。彼女も古いものが好きで、そこの手前の「束の舎」とある棚は彼女のお店というか、彼女の棚なんです。

私はすごい面倒くさがり屋なんですけれど、彼女はマメで、「カード決済を導入したほうがいいよ」と申し込んでくれたり、お給料を払ってるわけでもないのにめっちゃサポートしてくれるので助かっています。

店舗の奥にあるスペースは、友人のWebデザイナーの仕事場でもある。

店舗の奥にあるスペースは、友人のWebデザイナーの仕事場でもある。

棚の一部もシェアしている。友人のお店「束の舎」の棚。

棚の一部もシェアしている。友人のお店「束の舎」の棚。

-実は私、以前にここでアンティークのハットピンを購入したのですが、その時にいらしたのはお友達の方ですか。

そうです。彼女がハットピンのイベントをやっていましたね。

-店名や外観は洋物の骨董屋さんぽい感じですけれど、拝見するとそれだけではないんですね。

日本のものも多いですよ。あまり「THE 和風」というものはないんですけれど。

-特に古道具の中でお好きなジャンルとかはありますか?

箱系と入れ物系がわりと好きです。缶とか瓶とかとか。モチーフでと言うと鳥や馬が好きでつい買ってしまいます。

お店の什器はほとんど蚤の市で見つけてきました。古着屋さんで買ったものもあります。

箱系が好きだというだけあって、可愛らしいアンティークの缶が並んでいる。

箱系が好きだというだけあって、可愛らしいアンティークの缶が並んでいる。

-骨董は海外に買い付けに行かれたりするんですか?

独身の頃は海外にも行っていましたが、結婚してからは全然行けてないです。国内の蚤の市を回るのが好きですね。

イラストレーターになった時からお世話になって、初めての連載を持たせてもらった「小説推理」という雑誌があるのですが、今そこで蚤の市を回る連載をしています。十何年前から担当してくれている編集者に蚤の市の話をしたら、「僕も行きたい」と言うので一緒に行って、「これ連載にしましょうか」という感じで始まりました。否応なく1ヶ月に1回はどこかに行かないとネタがなくなります(笑)。もう33回になりました。

東京は骨董市が多くて楽しいです。京都にも弘法さんとか北野天満宮で毎月やっているのはありますけれど、東京ほど頻繁に開催されてないと思います。東京では毎週末どこかでやっていますよ 。

「小説推理」誌上で蚤の市をめぐるイラストエッセイを連載中。

「小説推理」誌上で蚤の市をめぐるイラストエッセイを連載中。

-それはなんというか、趣味とイラストのお仕事とお店の実益を兼ねていますね。

そうなんですよ。どうせなら、そういうふうに結びつけようとしているんです。子供と遊びに行くのも「Hanakoママ」というWebのイラストエッセイにして仕事にしています。

-素敵なアクセサリーも置いてあります。

赤坂の蚤の市に行った時にクラフトマーケットも一緒に開催されていて、そこで作家さんがいろいろアクセサリーを出されていました。私はアクセサリーも大好きで、それがすごい素敵だったんです。最初お店に置くのはアンティークのものだけにしようと思っていましたが、作家もののアクセサリーは雰囲気があるので古道具に合いそうだし、実際アンティーク・パーツを使うアクセサリー作家さんもけっこういらっしゃるんですよ。

ほんと「すごいな~!」と思うので、こう言うとおこがましいですけれども、そのすごさをもっとみんなに知らせたいという気持ちがあります。売上よりも広く知らしめる方を頑張ってやりたいです。と言いながら、お店には自分の好みのものしか置いてないですけれど(笑)

お気に入りの現代作家さんのアクセサリーも目立つところに展示してある。

お気に入りの現代作家さんのアクセサリーも目立つところに展示してある。

家族の状況は年々変わって行くものだから、合理的に「手抜き」し柔軟に対応する

-イラストのお仕事とお店、そして家事や育児も含めて両立されるために何か工夫されていますか? お子さん3人、しかも一番下は保育園というと、かなり大変かと思うのですが。

自動調理の無水鍋・ホットクックを使ったり、お掃除ロボット・ルンバを活用したり食洗機使ったり、家事はとにかく手抜きにしています。確定申告ももともと苦手なので、会計士さんに丸投げです。

食洗機もマンションに備え付けてあったのを10年近く使ったことがなかったんですが、使い出したらもう便利でやめられないです。お風呂の掃除は当番制にして子どもに任せています。私は日曜日しか洗わない(笑)。

-便利な道具や機械に任せることができたり、リーズナブルに外注できるものはどんどんそうしないと、とても全体を回せないと思います。お子さんが大きくなってくると、家事も分担できるようになってきますね。

長男は5年生なので、そろそろお米を炊いてもらおうと思っています。この間「りんご食べていい?」って電話がかかってきて、家へ帰ったらピーラーでむいた皮がシンクのところに散乱していました。「これちゃんとせいよ! そして包丁で剥け!」という感じで、まだまだではありますが。

-何か自分でやろうとした時が鍛え時です(笑)。家族というチームの一員として、だんだんに役に立ってもらわないと。

息子の将来の結婚相手のためにもね(笑)。「これはお手伝いじゃない。仕事だ」「家族の一員としての仕事やから、ちゃんとやれ」と教えています。手伝いといったら甘えそうなので。

こちらは揃いの蓋物。アンティークならではの味がある。

こちらは揃いの蓋物。アンティークならではの味がある。

-お店に出ている日は、だいたいどんな感じで一日を回していますか。

一番下の子を保育園に送っていくのは夫の担当なんですけども、夫が出張中は私が送って行って、それからお店に来ます。保育園の関係もあって平日の午後5時までしか開けていられないので、なかなか働いている層に来ていただけないのが悩みです。本当は土日も店を開けたいですが、子供がいると開けられなくて。そのあたりはなかなか難しいです。

-今はイラストのお仕事もほとんどここでされているのでしょうか。

そうです。お客さんが来て中断したり、なかなか集中できないこともあるので、仕事量や内容は調整するようになりました。前は書き下ろしの書籍も受けていましたが、さすがにそれはちょっと厳しくて、手離れの良いものを中心にやるようにしました。

「HanakoママWeb」では子どもとのお出かけ連載を3〜4年やっています。子どもたちも大きくなるにつれて習い事が増えてきて、特に発表会に向けての練習があると土日が潰れるようになっています。お出かけの時間が取れなくなってきたので、そろそろ別のテーマでやりたいなと思っています。

-お子さんの成長につれて、状況も変わってくるんですね。他にはどんなイラストを描かれていますか?

書店でご覧になりやすいものでいうと、4月から EテレのNHK 英語番組「知りたガールと学ボーイ」のテキストで導入マンガみたいなものを描きます。私も NHK テキストで英語を勉強していた身なので嬉しいです。

小物のディスプレイにも独特の世界観があり、見ていて飽きない。

小物のディスプレイにも独特の世界観があり、見ていて飽きない。

無理をせず、やりたいことからずれないよう、細く長く、少しずつ先に進んでいきたい

-これからやってみたいことは?

本当はもう少しお店のことをしたいんですけれど、現状ではなかなか手が回らないです。通販もやりたいと思いつつ、なかなか準備ができないですね。

私もネットで骨董を買ってみて「思ったのと違う!」という経験をしているので、古いものは実際に見てもらって購入していただいた方がいいかなと思います。ネット通販を始めるとしたら、アクセサリーだけに絞ろうかと考えています。

それと、この物件が気に入りすぎて決めてしまったので、自分のイメージしたような空間が作れている一方で、予想以上に人通りが少ないのが誤算でした。

-確かに人通りは少ないです。

このお店を作ってから、同じ通り沿いに「KOTORITACHI」ができて、「ああ、やっと仲間ができた」という感じです。あと一軒くらい近くに可愛いもの系のお店が増えると来てくれる人も増えるのではと期待していますが、いかんせん現状ではあまりに少ないですよね。どうやって認知度を上げるかが課題です。ご近所の方にも「あれ? こんなところにお店あった?」ってびっくりされますから。

このお店の存在感をアピールするために、今年はもっと外に出て行こうと思っています。4月1(月)~7日(日)にはハイファミリアのギャラリースペースに出店しますし、4月24(水)~30日(火)は吉祥寺パルコの東急側スペースに出店する予定です。

-そちらにも寄らせていただきますね。楽しみです。

とりあえずイラストという屋台骨があるので、イラストの仕事ができているうちに、細く長くちょっとずつやろうと思っています。無理をして自分のコンセプトから外れていってしまうのも怖いですし。

骨董好きに向けて、お店の存在感をアピールするのが今後の課題。

骨董好きに向けて、お店の存在感をアピールするのが今後の課題。

-このお店を出されたことで、ご自宅で仕事していた頃とはまた違った視点で三鷹という街をご覧になっているのではないかと思うのですが、いかがですか?

一番感じたのは、「地域の住民の方々と知り合いになれるのが、こんなに大切なことだったのか」ということですね。お店同士もそうですし、近所から来てくれるお客さんもそうです。今後も三鷹で生活していく上で、地域に知り合いがいるのって素晴らしいなと思います。

あとは、「もうちょっとお店同士で仲良くなって、三鷹を盛り上げていけたらいいな」とすごく感じます。私が杉並に住んでいた10年前には西荻あたりも可愛いお店は全然なかったんですが、今や小さくて個性的なお店がたくさんあって歩くのが楽しい街です。高円寺も古着屋さんとか面白いお店がたくさん集まっていて、1日いられます。大それたことを言うと、このお店も西荻や高円寺のように、三鷹が独自の文化の香りがする街に育っていく「きっかけ」のお店の一つになれればいいなと思ったのです。そうそう簡単にはいかないですけれど、せっかくここにいるからには、三鷹を盛り上げていきたいですね。


この記事を書いた人
萩谷 美也子 (いて座)サイエンスライター

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