子育ては夫婦平等が信条。子ども最優先のメリハリのある生活を送るのに、三鷹はちょうどいい。

片岡 ハルカさん

10年来の三鷹市民の片岡ハルカさん。フリーランスのエンジニアとして、会社や時間に縛られない働き方を謳歌していた片岡さんの生活は、4年前に男の子が生まれて一変しました。すべては子ども最優先で、働く時間も保育園に合わせてぴったり9時~5時。しかし片岡さんが語る子育てライフは気負うところがなく、変わらず飄々としていました。

片岡 ハルカさん(乙女座)
株式会社ドラムソフト代表取締役社長。情報系の大学を卒業後、不動産会社でSEを7年務めた後に、フリーランスのエンジニアとして独立し、2018年に法人化。会社員時代に知り合って結婚した妻も会社の社長。4歳になる男の子は、夫婦どちらかに偏ることなく、平等に子育てしている。

夫はプログラミング、妻は園芸関係の社長夫妻

-片岡さんは子育て最優先の働き方をしてらっしゃるそうですね。そのお話をうかがう前に、どのような仕事をされているのか教えてください。

コンピューターで動くものを作るのが仕事です。例えば、タブレットやスマートフォンで動くアプリを作ってます。最近では子ども向けの、キャラクターが動く英語教材のアプリを作りました。

他には、このごろあちこちに24時間営業のフィットネスジムが増えてますよね。そういうところで、会員さんがカードで鍵の開け閉めができるシステムを作りました。顧客管理システムとの連携が必要だったのですが、顧客管理システムを売っている会社では、鍵の開け閉めはわからないし、鍵のシステムを売っている会社は、入退場を顧客管理システムに反映させたいとなるとお手上げです。そういうところを請け負う会社を通して、お話がくるんです。

ウェブサイトの管理や、音楽のエンジニアリングもしています。録音したり、音を調整する手伝いをしたりとか。

-どれも、全然違う種類の仕事のように聞こえますけれど…。

コンピュータープログラムで動いているという意味では一緒です。

-社会人になってから、ずっとプログラムの仕事をしているのですか。

初めの7年間は不動産の会社にいました。その会社にはエンジニアが私1人だけで、会社関連で必要なものを全部作っていました。でも、僕はもともと会社員に向いていなかったんです。夜更かして、寝坊して、すごく遅刻していました。お客さん対応がない、社内システム担当だったのをいいことに。

「疲れたな、一旦辞めるか」と思ったのですけれど、後任がなかなか見つからなくて。そうこうしているうちに2007年末にリーマンショックがあり、優秀な人が転職市場に出てきたので、ようやく後を引き継いてくれる人が見つかって、1年以上かけて引き継いでから会社を辞めました。

-その会社から外注として仕事を受けるようなことはせずに、スパッと辞められたのですね。

「フリーランスエンジニアです」と名乗ったのですが、そんなに仕事がないので、最初はろくに仕事をしてなかったです(笑)。そこで、「お金がなくなって、家賃が払えなくなりそう」とtwitterに書いたら、大学時代の先輩たちが仕事をくれるようになりました。

-twitterでつぶやいて仕事をもらうとは、現代っぽいですね。

この手法は2回やってます。フリーランスになった時と、もう1回は子どもが生まれた後。子どもが生まれてしばらくは、定期的な仕事をもらっていた会社以外の仕事は、あまりしていなかったんです。フリーランスは育休がないですけれど、自動的に育休になってしまった。そして「ああ、やばいなぁ、貯金がなくなってきた」とtwitterでつぶやいたら、定期的に仕事をくれていた会社が、別の仕事をくれたんです。

-「お金がなくなった」と呟く営業って面白いですね。twitterにそんな使い道があったとは。

直接「仕事をください」と言えばいいんですけれど、それだとプレッシャーかけてしまいそうですから。

それに、仕事を通じて知り合っている人じゃないと、お互いにどういう仕事をしているか知らないこともありますよね。twitterに書いてみると、「じつはこういう仕事があるんだけれど」という話になりますよ。

-フリーランス時代も、去年、会社を設立されてからも、お1人で仕事をしていますよね。どうして会社にしたのですか。

最近、企業の法人所得税が安くなっていて、個人の所得税や消費税が高くなっていると言われているので、試しに会社にしたらどのくらい税金が安くなるのかなと思って。でも健康保険料と厚生年金保険料が高いので、総額としては大変損をしているという結果になりました(笑)。年収が2倍、3倍になると、相対的に安くなるので、稼げばいいのですけれど、1人で稼ぐには限界があります(笑)。

-今は三鷹駅の北側にある、ブース貸し出しのレンタルオフィス「SOHOプラザA」に入居されています。こじんまりとした場所でできる仕事なのですね。

はい。パソコン1台あれば大丈夫です。ここ(SOHOプラザA)に入居する前は、ミタカフェ(三鷹産業プラザにあるコワーキングスペース)を利用していました。

-三鷹のシェアオフィスを有効活用されていますね。

そうですね。ええっと……、子どもが1歳になってから……今年4歳だから……去年は3歳だから……ミタカフェを利用していたのは2年ぐらいです。

-年月の数え方が、お子さんの年齢基準なんですね。

そうです。子どもが生まれてからは、すべてが子ども基準です。

-もしかして、ミタカフェからSOHOプラザAに変えたのは、子育てのためですか。

はい。ミタカフェの方が、バス停から近くていいのですけれど、開いてない日もありますし、子どもを保育園に預けてからまっすぐ来ると、9時前に着いてしまって、ミタカフェはまだ開いてないんです。1時間ぐらいカフェなどで仕事をしたり時間を潰したりするのが嫌だったので、24時間いつでも入れるここにしました。

-ちなみに、お連れ合いはどのような仕事をしているのですか。

私がいた不動産の会社には、園芸部門があったんです。妻は国内外で園芸の修行をしているところで、会社で知り合いました。妻の実家は福岡でオーストラリア原産の園芸樹木を育てて販売する事業をしていて、子どもが生まれた頃は妻はその東京支社のような仕事をしていました。今は実家の会社とは分けて、合同会社両筑デザインプランツという会社を立ち上げて、ショッピングサイトをやったり、お客さんのお宅に行って樹木の剪定や管理方法を教えたりしています。お客さんにも来てもらえるように、東小金井と武蔵境の間の中央線の高架下にオフィスを構えています。

-ご夫婦とも社長なのですね!

SOHOプラザAでの片岡さんの仕事風景。コンパクトなスペースで、9時から5時まで集中して働く。

SOHOプラザAでの片岡さんの仕事風景。コンパクトなスペースで、9時から5時まで集中して働く。

保育園に預けるのは夫、お迎えは妻、夜ご飯は一緒に

-4年前にお子さんが生まれたばかりの頃は、どのような生活だったのですか。

三鷹台駅の近くに住んでいて、2人とも下北沢のコワーキングスペースを利用していたのですが、2015年4月に子どもが生まれて、半年ぐらいは2人とも仕事をするのをほとんど諦めていました(笑)。

コワーキングスペースを解約し、自宅で時間を分けて、午前は妻が、午後は私が仕事をすると決めていたのですけれど、妻は福岡から仕事がどんどん回ってきてしまって、お昼で交替できず、替われるところで替わればいいか、という感じでやっていたら、時間が細切れになるので、私は仕事があまり進まなくて。私が本格的に仕事に復帰したのは、子どもを預けるようになってからですね。1歳ちょっと前ぐらいです。

-お連れ合いのほうが仕事復帰が早かったのですね。

はい。妻は月に1週間ぐらい、福岡に行ったり、全国の展示会場に行ったりしなければならないんです。生まれて半年で福岡出張が入り、初めてだったので用心して、3人で行きました。でも私は向こうに行っても特にやることがないので、子どもの面倒を見ていたんです。

2回目からは妻だけで子どもを連れて行ったのですけれど、子どもがいると仕事にならないんですよね。1歳の誕生日の直後にまた出張があって、その時に妻が「今回から置いていきます」と。そうすると子どもも、泣いて抗議してもお母さんがいないから、おっばいをもらえないので、スッと断乳できたんです。あとは離乳食がメインで、サポートミルクだけに移行しました。出張断乳はおすすめです!(笑)

-片岡さんはどのようにして仕事復帰したのですか。

なかなか保育園が決まらなくて、一次選考に出した3園は3つともダメでした。私がフリーランスだったために、フリーランスだと会社員より後回しになるのですよね。でもいい加減に仕事をしないといけない状況だったので、すぐに預けられるところも同時進行で探しました。いわゆる「保活」をやったんです。

片っ端から電話をかけた中に、空きがあるからすぐに入れる認可外保育所があって、渡りに船で2月から2ヶ月ほど預けました。

-ようやく仕事ができる準備が整った、ということでしょうか。

その保育所は吉祥寺にあったのですが、朝のラッシュ時に子連れで電車に乗るのは大変なので、ベビーカーを押して神田川沿い、井の頭公園、住宅街を抜けて歩いて子どもを預けて、吉祥寺の喫茶店など、パソコンを広げられるスペースを探して仕事をしていました。

でも、最初はみなさん、そうですけれど、保育園でいろんな風邪に順番に感染するんです。週の半分は風邪で保育園に行けない、ということになるんですよ。

そんなわけで最初はなかなか軌道に乗らない部分もあったんですが、認可外保育所に通っている実績も選考に加味されるので、二次選考で今通っている三鷹市の認可保育園に入れることが決まりました。4月からそちらの保育園に通い始めて、やはり子どもたちの間で風邪が流行るんですが、うちの子は2月に経験していたのでけっこう元気に乗り切ることができました。

-ほぼ1年ぐらい、仕事をセーブして、お子さんとの時間を過ごされたわけね。

そうせざるを得なかったですね。目の前の状況に、対応しないと。たまたま妻の方が忙しかったから。

-今はどのようなペースで仕事をしているのですか。

結局、保育園が開いている時間に制限されてしまいます。8時半に預けて、9時にここに来て、17時半がお迎えなので、だいたい妻がお迎えに行くのですけれど、私も17時ぐらいにここを出て、日によっては迎えに行ったりして、家に帰ります。

-仕事時間は、ぴったり9時~5時ですね。

そうですね。お店並みにぴったりそうですね。

すごく忙しい時期は、妻に任せて遅くまで仕事をすることもありますけれど、基本的には一緒に夜ご飯を食べて、そのあとお風呂や歯磨き、寝かしつけまで、夫婦一緒にやってます。

-お2人で協力して、一緒にやっているのですか。

そうです。だいたい私が風呂に入れて、子どもが風呂から上がって、私が洗っている間に妻が服を着せてと、細かくは分担がありますけれど、気持ちとしては2人とも子どもの当番をしています。

妻が出張の時は私が1人で、私が残業の時は妻が1人でやっているから、子どもの面倒は全部2人とも見られる。2人ともいるときは2人でするし、どちらかがいない時はもう1人がします。

「イクメン」って言葉がありますけれど、なんとなく普段は子どもの面倒を見ないお父さんに、育児をしてもらうために、おだてて使う言葉という感じがするじゃないですか。私は自分がイクメンという意識はないし、イクメンと呼ばれたくないんです。子育てに関しては夫婦同じだけ、2人一緒にやってるという意識でいます。

-子育てに便利なアプリを制作したことがあるそうですね。

はい。3年以上前に作ったものなのですけれど、子どもが泣いてから、ミルクを飲ませるまでの時間を最短にするにはどうしたらいいかと考え抜いて。ミルクって作ってから飲める温度まで冷ますのに時間がかかるんです。でもその時間をゼロにする専用の「調乳温度計算機」(https://drumsoft.com/hrk/formula.html)をプログラムして作りました。

-えっ。制作依頼があったからではなくて、我が子のために作ったのですか。

そうです。(アプリの画面を見せながら)これです。

調乳温度計算機アプリ

調乳温度計算機アプリ

例えば、100ccを33℃にしたい時は、室温が20℃なら、80℃の熱湯を43ml、冷蔵庫に入れていた5℃の冷たい水を46ml入れるとできます。哺乳瓶の種類も、ガラスとプラスチックでは、ガラスの方が室温がミルクに移行しやすく、冷めやすいんです。なので、ガラスとプラスチックで選ぶようにしています。

-これはかなり実験しないと作れないアプリだと思うのですが…。

理論上の式からプログラムを作るのは1日でできてしまうのですが、そこから実際に測った結果を元に調整をしました。調整してるうちに子が大きくなってしまって、自分の子にはほとんど使わずに終わりました(笑)。

今、必要とされている方に使ってもらいたいですね。計算機はホームページ上にありますが、アプリアイコンも作ったので、スマホのホーム画面に追加していただければと思います。

育ても働き方も気負いがなく、子ども中心の生活を朗らかに語る片岡さん

育ても働き方も気負いがなく、子ども中心の生活を朗らかに語る片岡さん

子どもが生まれて気づいた三鷹の利便性

-子育てをしながら働くのに、三鷹のシェアオフィスを便利に活用されていることを先ほどうかがいました。そのために三鷹に住んでいるのですか。

もともと妻が三鷹台に住み始めたのは、たぶん家賃が手頃というのが理由だったのだと思います。私も2008年から一緒に住んでいますが、当初は会社員でしたし、フリーランスになってからも下北沢で仕事をしていて、遊ぶ時も渋谷方面か吉祥寺でした。三鷹台は三鷹駅も三鷹市役所も遠いですから、あまり三鷹に住んでいる意識はありませんでした。

子どもが生まれてからは、三鷹市内しか保育園の希望が出せなかったですから、そこでようやく三鷹に目が向くようになりました。

決まった保育園が、大人の足で20分かかり、しかもラインで区切られているだけの狭い歩道しかない道を歩かなければならないところでした。アパートも手狭になったことだし、なるべく保育園に近いところに引っ越そうということになり、今の住まいを見つけました。三鷹台駅までは15分かかりますが、保育園までは10分で行けます。保育園の目の前のバス停から、三鷹駅までバス1本で出られます。

-保育園を優先して、物件を決めたのですね。

そうです。特に子どもが小さい時ほど、子の都合優先になってしまいますね。ちなみに引っ越し先は、希望を出したのに入れなかった別の保育園のすぐ裏手でした。他に物件が無くて(笑)。

-それは悔しいですね。保活の実体験をうかがっていると、大変だということがよくわかります。

子どもが生まれた頃に住んでいた三鷹台駅周辺には小さな保育園が1つしかなく、途方にくれました。ですが市内には毎年数園、保育園が増えている様ですので、市全体としては預けやすくなっていってるかもしれません。

-三鷹のシェアオフィスや保育園の事情は、以前から知っていたのですか。

いいえ、知りませんでした。三鷹市がSOHO向けの支援を、SOHOが世間で注目されるずっと前から行なっていたことを知ったのも最近です。そうした支援のおかげで、オフィスを安く使えるのはありがたいです。

うちの子の保育園は三鷹市の保育園ですが、公私連携型で社会福祉法人が運営しています。施設は大きくてしっかりしているし、事業の姿勢も頼りがいがあります。三鷹市はSOHO支援にしても、公私の連携がうまくいっている印象です。

子どもが生まれるまで、行政サービスについてあまり知らなかったのですけれど、結果的に三鷹どっぷりの生活になりました。


この記事を書いた人
小田原 澪 (てんびん座)ライター

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